設立趣旨

長年にわたる研究成果を現代人の
健康の増進と福利の向上に役立たせたい

現代の物質文明は人類にかってない豊かさをもたらした反面、健康面に関する心や幸福感といった精神的な要素がないがしろにされるというマイナス面も生み出した。わが国においても格差社会の拡大が懸念され、物質主義・効率主義への偏重は、現代病といわれる各種の精神的疾患、慢性的な内科的疾患など治療の難しい病気の増大をもたらしている。

時代特有の疾患は、その時代の環境を反映しているといわれる。健康は幸福の原点であることを考えれば、物質と精神が乖離した現代文明の思潮を改め、新たな健康観の確立と医学による対応をなさなければならない。

現代医学はデカルトの二元論の哲学、ウィルヒョウの細胞病理学を基盤として大きな発展をとげることができた。しかし、開かれたシステムとしての生命体は物質を対象とした科学のように「要素還元主義」「客観主義」「決定論」だけで理解することは不可能である。現代科学の方法論に基づく医学が、細菌による感染症を防ぎ得ても現代病といわれる多因性の疾患に無力であることがこれを物語っている。

私は東京大学伝染病研究所(現医科学研究所)の時代にインターフェロンを発見した後、多くの漢方生薬の中から体内のマクロファージを介してインターフェロンを産生させるインターフェロン・インデューサーを発見して、感染症を初めとして花粉症(Ⅰ型アレルギー)等の疾病予防に大きな成果を挙げることができた。しかもマクロファージを介するため、ヒト、家禽、家畜、養殖魚ならびにペットの健康維持にも効果があり、漢方生薬の食品分類に属するものの中から選ばれるので副作用の心配も目下のところ無いという特徴を持っている。インターフェロン注射に比較し、非常に安価である点にも注目したい。

また、研究のプロセスでウィルスとウィルス抑制因子が共存している現象に出会い、漢方にいう「敵・味方共存」の基本概念の正しいことを知った。また、漢方という経験的な医療の効果をインターフェロン産生能を指標にしながら科学的に立証することが可能であるとの認識に到った。

現代病への対応は、「治療よりも予防」「感染しても発病させない」「病と共存して健康を保つ」ことが基本的な戦略である。

東洋思想にいう「自然との調和と共生」はこれらの思想的な根拠をなすものである。また、現代病は多因性の疾患であるため、これまでの科学が分析的に進めてきた、優れた一つの機能を精製単離する分析的方向に、一つの物質が如何に多くの機能を併せ持つかの総合的な解析も必要である。そして、生薬や食品といった自然界の生物は、この役割を果たし、人の自然免疫に働きかけて調和的な治療の手段を与えてくれる。

私は、長年にわたる研究成果を現代人の健康の増進と福利の向上に役立たせ、さらに研究を発展させながら次世代に引き継いでいくことが、日本国民のみならず人類にとって有益であり、将来の共通の資産になりうると確信した。

その具現化について、あらゆる角度から検討した結果、営利を目的にしないこと、ボランティアスタッフが多数を占めること、不動産の賃貸や各種団体との契約が必要と予測できること、大学を始めとする各種団体との研究や契約が発生することなど勘案し、特定非営利活動法人の設立が望ましいと考えるに至った。